ご挨拶

神奈川学園は「二兎」を追いつづける

学校長 湊谷利男

「学力」と「人間力」

 本校は、ずっと以前から、「学力」と「人間力」を育成すべき二つの柱として、教育の中に位置づけてきました。ときに一体のものとして、ときに二項対立的に言われる「学力」と「人間力」ですが、本校はこれらを一人の中に育まれる不可欠かつ不可分な要素として、大切に育てようとしてきました。


「数字」に表れやすい「学力」ですが……

 21世紀教育プランがスタートして11年、今年から新しい段階である「第3ステージ」をスタートさせました。2008年度の「第2ステージ」から引き続き強化しているのが、学力の育成です。
 学力というのは比較的「数字」に表れやすい傾向を持っていると感じます。もちろん、一人ひとりのもつ学力の、ほんとうに深いところまで数値化することは不可能ですが、例えば模擬試験を受けたときの偏差値や大学の進学状況などで、その一端を把握することは可能でしょう。
 そうした視点から見ると、2010年度卒業生は、全体として「学力を伸ばした」と言えると思います。9割近い人が4年制大学に進学をし、一般的に「難関」とされるGMARCH以上の学校に前年の1.7倍の人が合格しました。このような数字が映し出しているのは、「過去最高水準まで学力を伸ばした卒業生」という姿です。しかし、ほんとうに大切な部分、つまりその結果に至る「過程」そのものはなかなか数字という形では見えてこない部分でもあります。
 こうした結果に結びつくまでには、『Diary』や『学習日誌』の取り組みがあったり、各教科が一人ひとりにていねいに行う「ノート指導」などがありました。授業の質の向上や、補習の制度化、数多い理科の実験を始めとする授業研究の深まりなどがあって、そしてもちろんそれに応えようとする卒業生一人ひとりの努力があって初めて、上記のような結果に結びついたわけです。しかし、ほんとうに大切なこうした過程は目に見えないわけです。
 そして、実は最も学力と深いところで結びついている「人間力」という要素こそ、まったく数字には表れない部分だと言えるでしょう。しかし、実は本校教育の要諦は、まさにそこにあると考えています。


「人と出会い、社会と出会う」新段階

 本校の「人間力」を育てる教育、「人間教育」の大きなウエイトを占める要素に「人と出会い、社会と出会う」という方針があります。これまで、社会の第一線の方にお会いすること、国際舞台に立つことなどを通しながら、一人ひとりが人生の目標を見出してきました。そして今年、この「人間教育」は、二つの意味で新しい段階に入りました。
 一つは行事改革です。これまで高校で大きな成果を残してきたFW(フィールドワーク)を中学3年生に移行しました(現高校1年生までは、旧来のカリキュラムのまま高校で実施します)。高校では、選択した方面を深く学ぶことが可能でしたが、中学生で実施することによって、従来は個々の方面で学んでいた内容まで全体で学ぶことができるようになりました。現在取り組んでいるみなさんの意欲的な声も聞いています。
 また、国際教育も従来のAUS研修は希望制で維持したまま、さらに広く世界の5方面から選べるように、選択肢を広げました。歴史・文化・自然などを多様に学ぶとともに、現地の方々との交流もより多様な形が可能になりました。これらが、「人間教育」の新展開の一つめの意味です。


社会の中で、誰かのために……

 そして、もう一つの意味は、実は生徒のみなさん自身が踏み出したものです。
 今年、3月11日は日本にとって大きな転換点となる1日でした。本校でも、震災当日はもとより、学年末から春休みにかけてほとんど登校できない日々が続きました。久しぶりに登校した学校では、「久しぶり」と声をかけあいながら、あちこちで嬉しそうに笑いあう生徒のみなさんの姿が見られました。とても印象的な場面でした。被災地とは比較になりませんが、それでも一人ひとりにとって「当たり前」の日常生活、学校生活がいかに大切かを実感した時間だったと思います。
 その後、こうした体験もふまえながら生徒会は今年の大目標に「社会の中で、誰かのために、何かができる集団になろう」を掲げました。まさに「社会と出会う」一歩をみなさん自身が踏み出したわけです。この目標を生徒総会でも討議し、さらに現在も目標に添いながら、一人ひとりが本当に「自分に何ができるのか」に向き合っています。
 今夏は暑い日々が続きました。それでも多くの生徒のみなさんは「節電は、自分たちができることだから」とエアコンをがまんしたり、付けても28℃を維持したり、という取り組みをごく自然に行っていました。むしろ私たち教員の側が、「熱中症だってあるんだから、無理をしない範囲でやろう」とブレーキをかける場面さえありました。
 こうした、「社会に向ける眼」こそが、一人ひとりの「人間力」を育て、ひいては「学力」を育てていくのだと思います。


「誰かのために」は強い

 毎年多くの卒業生が、本校での6年間をふり返り、その体験談を残していきます。その多くに共通して語られているのは、本校で「夢」を見つけ、それを実現するためにがんばった姿です。人間は、「自分のためだけ」には頑張れないことも、「誰かのために」と思えた瞬間に頑張れることが多いものです。そんな事実を、卒業生たちの言葉から、改めて感じます。
 そして、「誰かのため」になろうとするからこそ、「学力」を伸ばすことも可能になるのだと感じます。正しく学ぶ力、考える力は、まちがいなく社会を良い方向に向け、「誰か」を幸福にするものだからです。
 ぜひ在校生のみなさんにも「私はどうやって世の中で力を発揮していくのか」という夢を見出してほしいと思います。もちろん、学校としてもみなさんを全力でバックアップします。「学力」と「人間力」の育成を可能な限り高いレベルで実現することを目指します。神奈川学園は、「学力」と「人間力」の育成という「二兎」を追い求めつづけます。


 ――さあ、つぎは、みなさんの番です。

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